抗VEGF治療とは

抗VEGF治療とは、「眼内の適切な箇所まで薬剤を届けるために開発された治療方法」です。
ものを見るためには、目を通して「見えたもの」を信号に変えて脳に送る必要があります。そのため眼内は透明に維持されており、網膜という神経組織が機能しているなど、特殊な構造・機能が備わっています。
眼内の機能にトラブルが起こると、見る機能が低下することになります。
眼科治療では点眼薬がよく使われますが、眼内にトラブルが起こった場合は、点眼薬では薬の成分がなかなか届きません。そこで抗VEGF治療では、眼球に注射をすることで薬剤を眼球に届けるのです。
抗VEGF治療では、おもに「血管内皮細胞増殖因子(VEGF)と呼ばれる分子」を標的にする抗体、またはその類似分子を薬剤として使用しています。そのほか、ガンやリウマチの場合も特異分子を標的とした製剤が導入されています。

抗VEGF治療を行う
対象について

抗VEGF治療は、おもに「加齢黄斑変性、糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症、近視性脈絡膜新生血管など」に使用されています。
網膜の黄斑に本来存在しない血管「新生血管」が出現し、黄斑出血や浮腫が引き起こされて視力低下につながるのが「加齢黄斑変性」です。同じような病気としては「近視性脈絡膜新生血管」もあげられます。日本では、加齢黄斑変性が起こるのは50歳以上からですが、近視性脈絡膜新生血管は年齢に関わらず、強い近視が関係しています。
「糖尿病網膜症」は、網膜内微小血管が閉塞するとともに、網膜新生血管や脆くなった血管が出血や黄斑浮腫になります。
また「網膜静脈閉塞」でも、網膜静脈の血流が還流障がいを起こすことで、出血や浮腫が引き起こされます。
いずれの病気も、おもに血管内皮細胞増殖因子(VEGF)が関わっています。これを抗VEGF治療で阻害することで、出血や浮腫を抑えることができ、視機能低下の予防や、低下した視力の改善につながります。

抗VEGF治療の治療方法

検査

まず初めに眼科一般検査と特殊検査を行って、抗VEGF治療の治療対象かどうかを確認します。

問診

アレルギーの有無などについても問診することで、注射をしても問題がないかどうかチェックいたします。

硝子体注射の実施

必要な処置の後に患者さまにはベッドに横になっていただき、消毒を行い、注射をします。注射は顕微鏡を使って細部まで確認しながら丁寧に行います。

硝子体注射後の過ごし方と翌日の受診

注射後、リカバリー室で15分間安静に過ごしていただいてから、問題がなければご帰宅いただきます。
なお、当院では感染症の有無などを確認するためにも、注射を行った翌日に再度の受診をお願いしています。

抗VEGF治療の費用について

使用する薬剤は複数あり医療費負担の割合でも異なりますので、治療することが決まったら説明させていただきます。目安として1回の注射で1割負担の場合14,000円前後、3割負担の場合55,000円前後になります。また、この治療は1回注射するとそれで終了することは少なく、所見が安定するまで継続注射治療が必要になります。治療継続期間は疾患により異なり、また薬に対する反応によっても異なりますので個人差が出てきます。効果や今後の予想など詳細は直接担当医が説明させていただきます。
<高額療養費制度>医療機関などで支払った金額がその月の一定額(自己負担額)を超えた場合、超えた金額が支給される制度が適応になる方もいらっしゃいます。このためには認定書の申請など健康保険窓口などに相談していただくことになります。

リスク・副作用

注射した箇所から出血することがあります。ただし、ほとんどの場合、出血は少なく数日以内に落ち着きます。
注射した箇所に重苦しい感じがすることもありますが、それもたいていの場合、一時的なものです。
まれに、眼圧上昇、眼内感染症、白内障の進行、眼内組織の障がい、脳卒中、生理不順などが起こることがあります。

抗VEGF治療後のご注意

注射後、一時的に目がかすむ可能性があります。かすんだ状態が回復するまで、自動車の運転、機械の操作などは避けましょう。
また注射当日は入浴をお控えください。翌日以降は日常生活をお過ごしいただけます。
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